産業用太陽光発電(ソーラーパネル)とは?家庭用との違いや導入費用、税制優遇制度などを解説

「産業用太陽光発電は家庭用と何が違うの?」
「導入にはいくらかかる?」

このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

産業用太陽光発電は、発電容量10kW以上の太陽光発電システムを指します。

収益化が可能な再生可能エネルギーの一つで、電気料金の削減や環境への貢献など、企業にもたらすメリットも大きいです。

この記事では、産業用太陽光発電と家庭用の違いから導入費用、ランニングコスト、さらには税制優遇制度まで詳しく解説します。

記事を読めば、産業用太陽光発電が自社にどのように役立つかがわかります。

株式会社VICTORYでは、パネル設置から電気工事、キュービクルの改造、耐圧試験・使用前自己確認等の申請関連までワンストップで対応しております。産業用太陽光発電にご興味がある場合は、お気軽にご相談ください。

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産業用太陽光発電とは?家庭用との違いを整理

太陽光発電における家庭用・産業用の分類

産業用太陽光発電とは、発電容量10kW以上の太陽光発電システムのことです。発電容量が基準となるため、一般住宅でも容量が10kWを超える場合は産業用扱いになります。

太陽光発電における家庭用と産業用の主な違いは以下のとおりです。

家庭用 産業用
発電容量 10kW未満 10kW以上
主な目的 自家消費・余剰売電 自家消費・全量売電
設置場所 戸建て住宅の屋根 工場・商業施設の屋根や広大な土地
FIT買取期間 10年 20年
設置費用 数十万円~数百万円 数百万円~数千万円

家庭用は「自家消費」が中心で、余剰電力を売電する形が一般的です。

一方で、産業用は「自家消費」で自社の電気代をまかなう選択に加えて、すべての発電量を売電する「全量売電」も選択できます。ただし、近年は売電価格が低下傾向にあることから、産業用でも自家消費が主流になりつつあります

産業用太陽光発電の導入にかかる費用

2025年現在、産業用太陽光発電の平均設置費用は15万円/kWです。

50kWの場合は、設置に750万円程度かかります。50kWとした場合の内訳の参考は以下のとおりです。

内訳 費用例(50kWの場合)
太陽光パネル 300万円
工事費 225万円
パワーコンディショナー・架台 225万円
合計 750万円

なお、発電容量が50kWを超える場合、キュービクル(高圧受電設備)の設置が別途必要になります。(150万~200万円程度)

また、50kW未満の場合でも、事業で高圧電力を利用したい場合(自家消費案件)は、キュービクルの設置が必要になるケースがほとんどです。

産業用太陽光発電の運用・維持にかかる費用

資源エネルギー庁の調査によると、産業用太陽光発電システムの年間平均維持費用は5,000円/kWです(※1)。

50kWシステムの場合、年間約25万円程度が運用・維持費用の目安です。あくまで目安であり、設置環境やシステムの規模・状態によって変動する可能性があります。

運用・維持費用の一般的な内訳は以下のとおりです。

内訳 内容 相場
清掃費 太陽光パネルの汚れを取り除くため清掃作業費(年1~2回) 基本料金1万円+1枚500~1000円
機材交換費 経年劣化したパワーコンディショナーや太陽光パネルの交換費用 パワーコンディショナー(10~15年交換):30~40万円
太陽光パネル(20~30年交換):設置当初の価格に準ずる
雑費(雑草対策・防犯など) 除草作業や防犯カメラ設置にかかる費用 設備内容により変動

また、太陽光発電の設備を災害や予期せぬ事故から守るためには、保険への加入も検討が必要です。

保険商品によって異なりますが、火災保険(または動産総合保険)の場合、保険料は初期費用の3~5%程度が目安とされています。

(※1 参考)資源エネルギー庁|太陽光発電について

産業用太陽光発電の売電価格

産業用太陽光発電にて売電を選択する場合、売電価格はFIT制度(発電された電力を国が定めた価格で電力会社が一定期間買い取る制度)によって決められています。

2025年度の売電価格は以下のとおりです(※1)。

設備区分 売電価格(1kWhあたり) 買い取り期間
10kW未満(住宅用) 15円 10年間
10kW以上50kW未満(地上設置) 8.9円 20年間
10kW以上50kW未満(屋根設置) 11.5円 20年間
50kW以上(地上設置、入札制) 入札制度により決定 20年間
50kW以上(屋根設置) 11.5円 20年間

FIT制度では、電力会社と契約した時点の売電価格で、買い取り期間中に発電した電力を買い取ってもらえます。

たとえば、10kW以上50kW未満の地上設置型設備を2025年度に設置した場合、1kWhあたり8.9円の価格で20年間売電収入を得られます。

売電価格は年々減少の傾向にあるものの、最大20年間は価格が保証されるのがFIT制度の特徴です。

買い取り期間終了後は、電力の買い取り価格が市場価格に連動する「FIP制度」への移行や、自家消費型への転換が一般的です。

(※1 参考)資源エネルギー庁|買取価格・期間等

産業用太陽光発電における自家消費型と余剰売電型、全量売電型の違い

産業用太陽光発電における自家消費型と余剰売電型、全量売電型の違い

産業用太陽光発電の運用方法は「自家消費型」「余剰売電型」「全量売電型」の3種類があります。

それぞれの方式の特徴やメリット、デメリットは以下のとおりです。

自家消費型 余剰売電型 全量売電型
特徴 すべての電力を自社で消費する 消費後の余剰電力を売電する すべての電力を電力会社に売電する
メリット ・電気代を削減できる
・売電単価の影響を受けない
電気代を削減しつつ売電収入を得られる ・シンプルで運用しやすい
・FIT期間中は長期的な売電収入が見込める
デメリット ・消費量以上の発電分は無駄になる
・蓄電池導入費用が発生する場合がある
FIT利用には自家消費率30%以上や地域活用要件などの条件がある ・売電単価低下により収益性は以前より低い
・ FIT期間終了後の収益計画が必要

各方式の特徴を理解し、目的に合った運用方法を選びましょう

産業用太陽光発電に活用できる補助金

産業用太陽光発電の導入に利用できる国の補助金は、すべて公募が終了しています

国の補助金は2013年3月31日に一度終了し、2021年度に再開されましたが、2024年度時点では太陽光発電単体を対象とした補助金制度は実施されていません。

ただし、地方の各自治体では、現在も補助金制度が実施されている場合があります。最新情報を自治体の公式サイトでチェックし、活用できる補助金を探してみましょう。

たとえば東京都では、都内の事業者が再生可能エネルギー設備や蓄電池を導入する際に、費用の一部を助成する制度を提供しています(※1)。

(※1 参考)東京都地球温暖化防止活動推進センター|地産地消型再エネ・蓄エネ設備導入促進事業

産業用太陽光発電に活用できる税制優遇制度

産業用太陽光発電に活用できる税制優遇制度は、以下の2つです。

  • 中小企業経営強化税制
  • 中小企業投資促進税制

それぞれ、詳しく解説します。

中小企業経営強化税制

中小企業経営強化税制は、自家消費型の産業用太陽光発電を導入する際に利用できる税制優遇制度です。

即時償却または取得価格の10%(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)の税額控除を選択できます。

ただし、中小企業経営強化税制の適用を受けるには、設備取得前に経営力向上計画を作成し、経済産業大臣の認定を受けることが必要です。

導入を検討中の場合は、設備メーカーや税理士に相談し、早めに手続きを進めることをおすすめします。

(参考)中小企業庁|中小企業経営強化税制

中小企業投資促進税制

中小企業投資促進税制は、取得価額160万円以上の機械装置等に利用できる税制優遇制度です。1台の取得価額が160万円以上であれば、自家消費型の産業用太陽光発電にも利用できます。

中小企業投資促進税制の措置内容は以下のとおりです。

対象者 措置内容
従業員数1,000人以下の個人事業主
または資本金3,000万円以下の中小企業
30%特別償却または7%税額控除
資本金3,000万~1億円の中小企業 30%特別償却

経営力向上計画の作成は不要で、設備取得後も申請できるため、手軽に税額控除を受けたい場合におすすめです。

(参考)中小企業庁|中小企業投資促進税制

産業用太陽光発電を導入するメリット

産業用太陽光発電を導入するメリットは以下のとおりです。

  • 長期的な売電収益が期待できる(売電を選択する場合)
  • 電気料金を削減できる(自家消費を選択する場合)
  • 非常用電源として活用できる
  • 企業のイメージ向上につながる

それぞれ、詳しく見ていきましょう。

長期的な売電収益が期待できる(売電を選択する場合)

産業用太陽光発電は、長期的な売電収益を期待できる点が大きな魅力です。とくに、FIT(固定価格買取制度)を活用することで、最大20年間の安定した収益を得られます

FIT制度では、太陽光発電システムを導入した時点の買い取り価格で、電力会社が電力を一定期間買い取ります。

たとえば、2025年度の産業用太陽光発電(10kW以上50kW未満)のFIT買い取り価格は、1kWhあたり8.9円です。年間発電量が50,000kWhの場合、20年間の総収益は890万円になります。

ただし、FITの買い取り価格は年々低下し、収益性は減少傾向にあります。そのため、近年は自家消費型や余剰売電型での運用が主流です。

電気料金を削減できる(自家消費を選択する場合)

産業用太陽光発電を自家消費型として利用することで、月々の電気料金を大幅に削減することが可能です。

とくに工場や大型施設など、電力使用量が多い事業者は、削減額が大きくなる傾向があります。

導入後のランニングコストも比較的低い(平均5,000円/kW)ため、初期投資の回収も早いケースが多いです。

非常用電源として活用できる

産業用太陽光発電を導入すれば、災害や停電の際に必要最低限の電力を確保できます

さらに蓄電池を併用すれば、夜間や曇天時の電力供給も可能となり、事業への影響を最小限に抑えられます。

とくに工場や病院、物流拠点など、電力の安定供給が求められる施設では、大きな助けとなるでしょう。

企業のイメージ向上につながる

産業用太陽光発電を導入することで、再生可能エネルギーの活用をアピールでき、企業のイメージアップにつながります。

とくに現代は、環境への配慮が企業価値として重視される時代です。社会全体で環境問題への意識が高まり、SDGs(持続可能な開発目標)に向けた取り組みを行う企業が評価される傾向にあります。

再生可能エネルギーを活用する姿勢は、環境意識の高い顧客や取引先に好印象を与え、新たな顧客の獲得につながるでしょう。

また、環境問題に取り組む企業姿勢は、新卒採用や中途採用でも高評価を受け、次世代の優秀な人材を引きつける要素となります。

産業用太陽光発電の導入前に考慮すべき課題

産業用太陽光発電の導入前には、以下の課題について慎重に考慮する必要があります。

  • 初期費用が高額になりやすい
  • 広大な設置スペースが必要
  • 火災や自然災害による破損の可能性がある

それぞれ、詳しく見ていきましょう。

初期費用が高額になりやすい

産業用太陽光発電の平均的な設置費用は15万円/kW程度とされており、設置容量が増えるほど総額が大きくなります。

50kWのシステムを導入する場合、初期費用は750万円程度となる計算です。加えて、設置場所の確保や清掃、防犯対策などの付随費用も発生します。

蓄電池やキュービクル(高圧受電設備)をあわせて導入する場合は、さらに追加の費用がかかる点に注意が必要です。

初期費用の負担を抑えるには、補助金や税制優遇制度をうまく活用しましょう。国や自治体が提供する制度を利用すれば、実質的な導入コストを削減できます。

広大な設置スペースが必要

産業用太陽光発電を導入する際には、広大な設置スペースが必要です。

一般的に、建物の屋上に設置する場合は1kWあたり約10㎡、地上に設置する場合は1kWあたり約15㎡のスペースが必要とされています。

50kWのシステムを導入する場合、屋上設置では約500㎡、地上設置では約750㎡の面積が必要です。

また、地上設置の場合には、土地の整備や防犯対策、地盤の強化など、追加の準備が必要になることもあります。

火災や自然災害による破損の可能性がある

産業用太陽光発電は、落雷や台風、地震など自然災害の影響を受ける可能性があります。電気系統の異常が原因で、火災が発生することも少なくありません。

火災や自然災害による損失を防ぐためには、以下の対策が有効です。

  • 自然災害のリスクが低い設置場所を選定する
  • 耐震・耐風設計を取り入れた設置方法を選ぶ
  • 避雷設備を設置する
  • 配線や接続部を定期的に点検する
  • 火災や自然災害をカバーする保険に加入する

設備の規模によっては対策費用が高額になる場合もありますが、将来的なリスクを考えると、必要な投資といえるでしょう。

産業用太陽光発電についてよくある質問

産業用太陽光発電についてよくある質問をまとめました。

Q. 産業用太陽光発電は経費計上できますか?

産業用太陽光発電は固定資産として扱われるため、購入した年度に全額を経費として計上することはできません

ただし、「中小企業経営強化税制」や「中小企業投資促進税制」を活用すれば、即時償却や30%特別償却などの優遇措置を受けられる場合があります。

売電型の場合は、法定耐用年数の17年で減価償却を行います。ただし、蓄電池など付随する設備の耐用年数は異なる場合があるため注意しましょう。

自家消費型の場合は、導入した場所で最終的に何を生産しているかによって耐用年数(償却年数)が変わります。詳しくは、国税庁「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」を参照してください。

Q. 産業用太陽光発電はどのような設置場所が適していますか?

広い平坦な土地や工場・商業施設の屋根が適しています。日陰になる障害物がなく、日射量が多い土地が最適です。

Q. 売電と自家消費のどちらを選べばよいですか?

収益の安定性を求めるなら売電、電力消費量が多い事業を営んでいる場合は自家消費がおすすめです。

売電はFIT制度により、発電した電力を電力会社に一定価格で買い取ってもらえます。将来の収入をシミュレーションしやすく、初期投資を計画的に回収できる点がメリットです。

一方、電力消費量が多い工場や商業施設では、発電した電力を自家消費することで、電気代を大幅に削減できます。

とくに電気料金の高騰が続く近年は、自家消費型の太陽光発電が注目されています

Q. 産業用太陽光発電の撤去費用はいくらかかりますか?

設置規模や設置場所によって異なりますが、撤去費用は一般的に設置費用の約5%程度が目安です。設置費用が1,000万円の場合、約50万円かかります。

まとめ

産業用太陽光発電は、長期的な売電収益や電気料金削減に加え、環境保全への貢献も期待できる魅力的な設備です。

ただし、初期費用や維持費用の負担、自然災害リスクといった課題もあるため、事前の十分な検討が必要です。

導入を検討する際には、信頼できる専門業者や税理士と相談しながら、慎重に手続きを進めましょう。

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